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2026.02.17

親知らずが「骨とくっつく」? new

親知らずの抜歯を検討されている患者さんから、時々このような不安の声をいただくことがあります。 「友達が親知らずを抜くとき、骨とくっついていて大変だったと言っていたのですが、私もそうですか?」

この「歯と骨がくっついている状態」のことを、専門用語で「癒着」、あるいは「アンキローシス」と呼びます。

今日は、歯科医師にとっても慎重な対応が求められる「親知らずの癒着」について、なぜ起こるのか、そしてどう対処するのかを詳しく解説します。

1. 本来、歯と骨は「直接」くっついていない

意外に思われるかもしれませんが、健康な歯は顎の骨と直接合体しているわけではありません。

歯の根っこと骨の間には、「歯根膜」という薄いクッションのような膜が存在します。この膜があるおかげで、私たちは噛んだ時の衝撃を和らげることができ、また矯正治療で歯を動かすこともできるのです。

しかし、何らかの理由でこの歯根膜が消失し、歯の根(セメント質)と顎の骨がダイレクトに結合してしまうことがあります。これが「癒着」の正体です。

2. なぜ親知らずは「癒着」しやすいのか?

親知らずが他の歯に比べて癒着を起こしやすいのには、いくつかの理由があります。

  • 慢性的な炎症(周囲炎) 親知らずは一番奥にあり、磨き残しから「智歯周囲炎」という炎症を繰り返しやすい部位です。長期間にわたって炎症が続くと、歯の周りの組織がダメージを受け、修復される過程で歯根膜が失われ、骨と癒着してしまうことがあります。
  • 加齢による変化 年齢を重ねるごとに、歯根膜の細胞の活性は低下し、骨は硬くなっていきます。40代、50代になってから親知らずを抜こうとすると、若い頃よりも癒着のリスクが高まっており、抜歯の難易度が上がる大きな要因となります。
  • 外傷や圧迫 親知らずが斜めに生えて前の歯を強く押し続けていたり、過去に強い衝撃を受けたりした場合、その物理的なストレスが原因で癒着が起こることもあります。

3. 癒着していると、抜歯はどう変わるのか?

もし親知らずが癒着していた場合、通常の抜歯とは手順や感覚が異なります。

通常、抜歯は「ヘッシ(エレベーター)」という器具を使い、テコの原理で歯を揺らして、歯根膜を断ち切ることでスポンと抜きます。しかし、癒着している歯は骨と一体化しているため、どれだけ力をかけても「揺れ」が生じません。

無理に引き抜こうとすると、周囲の骨を過剰に傷つけたり、顎に大きな負担をかけたりする恐れがあります。そのため、癒着が疑われる場合は以下のような高度な処置が必要になります。

  1. 歯の分割抜歯 歯を細かく分割し、骨とくっついている部分を少しずつ切り離していきます。
  2. 骨の切削 癒着している部分の骨を最小限削り、歯を動かすための「遊び」を作ります。
  3. CT検査による精密診断 当院では、事前のレントゲンだけでなく歯科用CTを活用します。3次元的に歯と骨の状態を把握することで、どこが癒着しているのか、神経との距離はどれくらいかをミリ単位で把握し、安全なシミュレーションを行います。

4. 「癒着=怖い」と思わないでください

「骨を削る」「分割する」と聞くと怖く感じるかもしれませんが、実は「無理に抜こうとしないこと」こそが、術後の痛みや腫れを最小限に抑える秘訣です。

癒着していることが事前に分かっていれば、私たちはそれ専用の術式を選択します。適切な器具を使い、計画的に骨から切り離すことで、結果として手術時間を短縮し、お体への負担を減らすことができるのです。

5. 大切なのは「抜くタイミング」の相談

親知らずの癒着を防ぐ、あるいは癒着による苦労を避けるための最大の対策は、「適切な時期に診察を受けること」です。

炎症を繰り返す前に、そして骨が硬く癒着しやすくなる年齢(一般的には30代以降)になる前に、一度歯科医院でチェックを受けることをお勧めします。若いうちであれば歯根膜もしっかりしており、もし抜歯が必要になったとしても、スムーズに終わることがほとんどだからです。

まとめ

親知らずが癒着しているかどうかは、肉眼では分かりません。しかし、プロの視点と精密な診断機材があれば、リスクを予測し、安全に対処することが可能です。

「自分の親知らずは大丈夫かな?」「以前、抜くのが大変だと言われたことがある」という方も、どうぞご安心ください。当院では、患者さんの不安に寄り添い、丁寧な説明と痛みに配慮した治療を心がけています。

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