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2025.12.16

横向き親知らずとは? 放置するリスクと抜歯の必要性 new

「親知らずが横向きに生えていると言われた」「抜歯が難しいから他の歯医者を紹介された」

このような経験はありますか?

親知らず(智歯)の中でも、特に厄介なのが「横向き親知らず」、別名「水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)」です。横向きに親知らずが生えている方は多く、まっすぐに生えた親知らずとは異なり、横向き親知らずは自覚症状がない状態でも、お口の中で深刻な問題を引き起こしている可能性があります。

この記事では、横向き親知らずのメカニズムから、放置した場合のリスク、そして多くの人が不安に感じる抜歯の必要性や流れについて、専門的な知識に基づいて徹底解説します。

1. 横向き親知らず(水平埋伏智歯)とは?

親知らずは、前から数えて8番目の歯で、10代後半から20代前半頃に生えてくることが多い、人類の進化の過程で「退化傾向」にある歯です。現代人の顎は小さくなっており、親知らずが生えるための十分なスペースがないことが多くなっています。

定義:埋もれた状態で「横倒し」の親知らず

横向き親知らずとは、歯茎や顎の骨の中に完全に埋もれているか、一部だけが顔を出した状態で、手前の歯(第二大臼歯)に向かって水平(真横)に倒れて生えている状態の親知らずのことを指します。

この状態を歯科専門用語で「水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)」と呼びます。「埋伏(まいふく)」とは「埋もれている」という意味です。

なぜ横向きに生えてしまうのか?

横向きに生える主な理由は、以下の通りです。

  • スペース不足:顎の骨の成長が不十分であったり、他の歯がすでにスペースを占領しているため、親知らずがまっすぐ生えるための道がない。
  • 生える方向の異常:親知らずが成長を始めた時点での方向が適切でなかったため、そのまま横に倒れた状態で成長してしまう。

2. 横向き親知らずを放置する「4つのリスク」

横向き親知らずは、一見問題がないように見えても、手前の歯や顎の骨に常に悪影響を与える可能性があります。

①隣の歯(第二大臼歯)の虫歯

横向き親知らずの歯冠(頭の部分)と、手前の第二大臼歯の根元が接触しており、歯肉から出ている箇所があると、歯ブラシが届かず、食べかすやプラークが溜まりやすい「清掃が難しい領域」となります。

その結果、第二大臼歯の根元から虫歯が進行しやすくなります。この虫歯は、通常の歯の表面の虫歯よりも進行が速く、気づいた時には神経に達しているケースや、第二大臼歯の抜歯が必要になるほど重症化しているケースもあります。

②歯周病・智歯周囲炎(ちししゅういえん)

親知らずの一部が歯茎から少しだけ顔を出している場合、歯と歯茎の間にできた隙間(歯周ポケット)に細菌が侵入し、智歯周囲炎を引き起こします。

智歯周囲炎は、歯茎の腫れや痛み、口臭、さらに進行すると、顔や顎の下まで腫れが広がる蜂窩織炎(ほうかしきえん)という重度の感染症を引き起こす可能性もあります。炎症が慢性化すると、周囲の歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶け、手前の第二大臼歯も歯周病になってしまう可能性があります。

③歯並び(歯列)への影響

強い力ではないとはいえ、横向き親知らずが手前の歯を押す力は多少なりとも存在します。

特に、歯並びの乱れやすい時期や矯正後の歯列にこの力が加わると、前歯のねじれ(叢生)や、きれいに矯正した歯の後戻りを誘発・加速させる一因となる可能性があります。

④嚢胞(のうほう)の形成

非常に稀ですが、親知らずの周りを覆っている袋状の組織(歯小嚢)に体液が溜まり、含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)という良性の腫瘍ができることがあります。

嚢胞は徐々に大きくなり、顎の骨を溶かしながら拡大します。自覚症状がないまま進行し、発見が遅れると顎の骨が弱くなるリスクを高める可能性もあります。

3. 横向き親知らずの抜歯は「難しい」と言われる理由

横向き親知らずの抜歯は、一般的にまっすぐ生えている親知らずの抜歯よりも難易度が高く、治療時間も長くなる傾向があります。

骨に埋まっていることが多い

横向きの親知らずは、歯茎だけでなく、周囲を硬い顎の骨に囲まれている「完全埋伏」の状態であることが多いです。そのため、抜歯をするには、まず歯茎を切開し、その後、ドリルなどで周囲の骨を削って親知らずを露出させる必要があります。

歯を分割して取り出す必要がある

横向きの親知らずをそのまま引き抜くことは難しいため、歯の頭(歯冠)を何分割かに細かく分けてから、一つずつ丁寧に取り出すという「分割抜歯」を行う必要があります。この作業には、高い技術と慎重さが求められます。

神経や血管との位置関係

下顎の親知らずの根の近くには、下顎管(かがくかん)という太い神経(下歯槽神経)と血管が通っています。レントゲンやCT検査の結果、横向きの親知らずの根がこの神経に非常に近い、あるいは接触していると判断された場合、抜歯時に神経を傷つけてしまい唇や顎のしびれが生じるリスクが高くなります。

このリスクを回避するため、難易度の高い抜歯や神経に近接した抜歯は、親知らずを得意としている口腔外科が可能な歯医者や大学病院・総合病院の口腔外科に紹介されることが一般的です。

4. 横向き親知らずの抜歯の流れと術後の注意点

横向き親知らずの抜歯は不安が大きいかもしれませんが、事前に流れと注意点を把握しておけば安心です。

抜歯前の準備(診断と計画)

  • 精密検査:レントゲン撮影はもちろん、必要に応じて歯科用CTを撮影し、親知らずの正確な位置、向き、根の形、そして下顎管(神経・血管)との位置関係を立体的に確認します。
  • 抜歯計画:歯科医師が検査結果に基づき、骨を削る範囲や歯の分割方法、起こり得るリスクを説明し、抜歯の計画を立てます。

抜歯当日の流れ

  • 麻酔:局所麻酔をしっかりと効かせます。
  • 切開・骨の除去:必要に応じて歯茎を切開し、親知らずを覆っている顎の骨を慎重に削り取ります。
  • 歯の分割・摘出:親知らずを分割し、周囲の組織を傷つけないように摘出します。
  • 縫合:必要に応じて傷口を縫合し、ガーゼを噛んで止血します。

術後の重要な注意点

  • 止血:抜歯後30分~1時間程度はガーゼを強く噛み続け、確実に止血します。
  • 安静:抜歯当日は激しい運動、飲酒、長時間の入浴を避け、安静に過ごしましょう。
  • 痛み・腫れ:術後2~3日をピークに腫れや痛みが出ることが多いです。処方された痛み止めを我慢せずに服用していただきます。
  • ドライソケット予防:抜歯窩(ばっしか:穴)の血の塊(かさぶた)が取れると激痛が走るドライソケットになるリスクがあります。うがいを強くしすぎたり、舌や指で穴を触ったりしないよう厳重に注意してください。

5. まとめ:横向き親知らずは早期相談が鍵

横向き親知らずは、あなたが自覚していない間に、隣の歯を虫歯にしたり、歯周病を引き起こしたりと、静かに破壊を進めている可能性があります。

「痛みがないから大丈夫」と放置せず、一度歯科医院を受診してレントゲンを撮ってもらいましょう。早期に状態を把握し、専門家と相談して適切なタイミングで抜歯を行うことが、あなたの他の大切な歯を守り、長期的な口腔の健康を維持するための最も確実な方法です。

難易度の高い抜歯になる可能性が高いため、親知らずが得意な歯科医院や口腔外科ができる歯医者を見つけて、親知らずの状態をチェックしてもらいましょう。

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当院では、様々な患者さまの親知らずを処置してきました。口腔外科に関しても得意は歯科医師が揃っており、経験豊富な歯科医師が丁寧に診療します。

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